相続が発生し、相続税の申告が必要になった際、「どこの税理士に相談すれば良いのだろう?」と悩む方は少なくありません。顧問税理士がいらっしゃる方は、まずその税理士に相談するのが良いですが、ほとんどの方は税理士との接点がないのではないでしょうか。
そこで今回は、相続税の申告を依頼する税理士を選ぶ際のポイントについて解説します。
Contents
税理士の探し方
知り合いからの紹介
もしご家族やご友人、または司法書士など他の士業の方に税理士の知り合いがいらっしゃるなら、紹介してもらうのが一番安心できる方法です。実際にその税理士と関わった人の話を聞けるため、人柄や対応なども事前に確認しやすいでしょう。
ただし、紹介された税理士が必ずしも相続税に詳しいとは限りません。紹介者を通じて、相続税の実績があるかどうかを確認してもらうことをおすすめします。
インターネットで探す
知り合いからの紹介が難しい場合は、インターネットで探すのが一般的です。「相続税 税理士」といったキーワードで検索すると多くの税理士事務所が見つかりますが、その中から自分に合った税理士を見つけるのは大変です。
そんな時は、これからご紹介する4つのポイントを参考に選んでみてください。
税理士選びの4つのポイント
1. 場所
場所と言っても「駅から近いほうがいい」という話ではなく、そもそもどの地域の税理士を選ぶかというのが重要なポイントです。
相続税の申告は、基本的に亡くなった方の住所地を管轄する税務署に行います。例えば、亡くなった方が北海道にお住まいで、相続人の方が東京や大阪にいらっしゃる場合、申告は北海道の税務署にすることとなります。そのような場合、どの地域の税理士に依頼するのが良いのでしょうか?
一般的には、以下の2つの方法が考えられます。
- 亡くなった方の地域の税理士を探す
相続税の計算では、土地の評価などで現地確認が必要になる場合があります。遠方の税理士に依頼すると、出張料が発生したり、その地域の不動産情報に詳しくなかったりという可能性も考えられます。
そのため、亡くなった方の住所地で税理士を探すのが一つの手です。
亡くなった方のご自宅であれば相続人全員が集まりやすい、といったメリットも考えられます。
- 相続人代表者の地域の税理士を探す
相続税の申告手続きでは、税理士と何度も面談やメール等でのやり取りをすることになります。
遠方の税理士では、面談の機会が限られてしまう可能性もあります。実務的には、連絡を取りやすい相続人代表者の近くで対応してくれる税理士を探す、ということも多いかと思います。
申告は亡くなった方の住所地の税務署に行うこととなりますが、基本的には郵送や電子での申告で問題ないため、距離が遠い事自体はデメリットにはなりません。
ただし税務調査が行われた場合に、亡くなった方のご自宅で調査を受けることもあり、立会を希望する場合は出張料などが発生してしまう可能性はあります。また前述の通り土地の評価などで出張料が発生することもあります。
もし相続人の方々が各地に点在している場合は、全国対応している大手税理士法人を検討してみるのもおすすめです。
2. 事務所の体制と実績
税理士事務所には、税理士が一人で運営しているところから、何十名もの税理士が在籍する大規模な税理士法人までさまざまです。どちらを選ぶにしても、まず相続税の依頼に対応しているかが重要になります。
中には、法人や個人事業主の顧問業務が中心で、相続税の申告はほとんど扱っていない事務所もあります。
そもそも相続に対応していなければ依頼できませんし、年間数件程度の経験しかない場合、最新の税制改正に対応しきれていない可能性も考えられます。
特に相続財産のうち不動産の評価については、税理士によって得意不得意が現れやすい部分となります。特殊な土地の評価について実績があるか、不動産鑑定士など他の専門家との連携があるかどうかもポイントです。評価に誤りがあると過少申告や過大申告につながってしまいます。
相続税の案件を多く手掛けている税理士であれば、さまざまなケースに対応した経験があり、安心して任せられるでしょう。また、相続税以外にも相続全般の手続きに関しても相談に乗ってくれたり、司法書士など他の士業と連携して対応してくれたりします。
相続税の受任数が多ければ多いほど良いというわけではないでしょうが、少なくとも毎年安定して相続税の案件を受任している税理士を探すのが無難です。
なお「相続専門」をうたっている税理士事務所もあります。そのような事務所であれば依頼を断られることはないでしょうから、相談しやすいというのはメリットです。ただし相続後の相続人の確定申告などは対応してくれないケースもありますので、注意が必要です。
3. 料金
税理士に依頼する際、どれくらいの費用がかかるのかは気になるところです。以前は税理士の報酬体系は国によって定められていましたが、今は完全に自由化されています。そのため、各事務所が独自の料金体系を設定しています。
一般的には、相続財産の総額の0.5%から1%が目安と言われることが多いですが、これはあくまで目安です。不動産の数が多い場合や相続人が多数いる場合など、状況によっては加算され上記に当てはまらない場合もあります。
ウェブサイトに「相続財産の0.5%」と記載されていても、いざ見積もりを取ってみると全く違う金額になる可能性もありますので注意が必要です。極端に安い料金や高い料金を提示している事務所は避けた方が良いでしょう。
可能であれば複数の税理士事務所から相見積もりを取ることをおすすめします。相見積もりを嫌がる税理士もいるかもしれませんが、料金体系が常識的な範囲内か、ご自身が納得できる金額かどうかを判断するためにも、複数の見積もりを比較検討することが大切です。
見積もりを依頼する際には、事前に財産内容をある程度把握しておくと、より正確な見積もりを出してもらいやすくなります。
予期せぬ財産が発見され費用が上振れしてしまう、といったことはあり得ますので、多少の財産増であれば見積もりの範囲内で対応してくれるのか、最終的に判明した財産で再度計算し直して報酬を請求されるのか、といった点も遠慮なく聞いたほうが良いでしょう。
4. 人柄
相続税の申告手続きでは、税理士と何度か面談し、メールや電話でのやり取りも発生します。そのため、手続きの途中でコミュニケーションのストレスがないかという点も非常に重要なポイントです。
税理士もいろいろな人がいますので、実際に話してみて「この人なら安心して任せられそうだ」と感じる税理士を選ぶことが大切です。
また、相続人代表者以外の相続人の方々ともやり取りが発生することもあるため、税理士への不信感が相続人同士のトラブルに発展してしまう可能性もゼロではありません。
なお、大きな事務所ですと実際に対応してくれるのは面談した税理士ではない別の担当者になってしまう可能性もあります。可能であれば見積もりなどで面談する際に、だれが担当してくれるのかも確認できると良いでしょう。
その点、税理士がひとりで対応している個人事務所であれば、直接話しができるため人柄を確認しやすい、といったメリットがあります。
まとめ
相続税の申告を依頼する税理士を選ぶ際の主なポイントは、
- 場所
- 事務所の体制と実績
- 料金
- 人柄
の4つです。
どの項目を優先するかは人それぞれですが、これらのポイントを総合的に考慮して検討することをおすすめします。特に、費用の項目でも解説したとおり、複数の事務所と面談し、見積もりや人柄を確認した上で、ご自身が納得できる税理士に依頼することが大切です。
税理士によって考え方や対応方法はさまざまですので、ぜひご自身に合った、納得のいく税理士を探してみてください。

東京都八王子市在住、37歳の税理士です。1987年11月18日東京都町田市生まれ、現在は妻と息子2人の4人暮らし。
相続税や所得税など個人に関する税金の算定、クラウド会計等を利用した小規模法人や個人事業主の業務効率化が得意分野です。