個人事業主でも加入できる、小規模共済という制度はご存知でしょうか?

非常に税制上のメリットの大きい制度なので、個人事業として事業を開始した方には加入をオススメしています。

また、賃貸不動産を多く持っている方の相続税対策としても有効です。

(ただし、不動産賃貸業の規模があまりに小さいと加入を断られるケースもあるようです。事業的規模であればおおむね大丈夫でしょう)

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小規模企業共済とは?

小規模共済とは、国の機関である中小機構が運営する、小規模法人役員や個人事業主の為の退職金積立制度です。

特に個人事業主の方は会社員と違って退職金というものがないため、将来に備えるという意味で毎月少しずつ、リタイアした際にもらえる退職金(のようなもの)を積み立てていくことができます。

安全なの?

一応、国の機関なので安全性は高いでしょう。(絶対とは言えませんが…)

掛金はいくらから? 経営が厳しくなったら減額はできるの?

月額1千円~7万円で掛金を設定することができます。掛金の変更も可能なので、経営が厳しくなったら減額できます。また、掛金の納付が著しく困難な時や災害等により納付できない事情があれば、一時的に掛金の納付をストップできます。

(なお経営が厳しい場合は既に支払った掛金のうち一定割合に限り、借り入れできる制度もあります。)

加入月数が伸びるほど税制メリットがあるため、とりあえず月1千円だけ掛けておき、余裕が出てきたら増額する、というのも有効でしょう。

掛金は全額返ってくるの?

掛金拠出月数が240か月(20年)未満で任意解約の場合は、受取額が掛金拠出総額を下回る場合があります。任意解約とは、個人事業は続けるものの小規模共済を解約したい、というケースです。

個人事業を廃業して会社員になる場合などは廃業による解約となり、掛金拠出月数が6か月以上であれば100%保証されるため、よほどのことがない限り元本割れするケースはないでしょう。

掛金拠出中に死亡した場合は、配偶者や子どもが共済金を受け取ることができます。こちらも元本は6か月以上の加入で100%保証です。

ちなみに、掛金には利息相当額がつくため、受取額は掛金総額にオマケがついてかえってきます。

税制上のメリット

掛金を支払った時

支払った金額は、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除になります。

そのため、支払額×(所得税率+住民税率)の分、税金が安くなります。

例:掛金月額3万円(年額36万円)、所得税率23%・住民税率10%の場合
→毎年36万円×(23%+10%)=118,800円分の節税

掛金36万円に対して12万円弱税金が安くなりますので、実質24万円程度の負担で36万円退職金の積立ができたことになります。

もちろん掛金支払いをすることで手元の現金がなくなりますので資金繰り上はマイナスですが、積立預金をしていると考えればメリットが大きいでしょう。

ただし積立預金と違って解約が自由にできない(任意解約は元本割れリスクあり)ため、経営状況や今後の生活費等も踏まえ、余裕のある範囲内で掛金を設定するべきでしょう。

解約して受け取った時

支払った際に所得控除(経費のようなもの)になっているわけですから、解約して受け取った際は逆に収入として課税されることになります。

この場合、受取方法によっていくつかのパターンに分かれます。

生前の廃業等による共済金受取の場合(一括受取)

掛金を拠出した本人の「退職所得」となり所得税・住民税がかかります。

退職所得とは、退職金等の受取による所得です。退職所得の計算上、加入年数1年につき40万円(21年目以降は1年につき70万円)の控除枠があり、かつその金額の1/2が課税対象。さらに他の所得とは合算せずに税率を判定して課税する(分離課税)ため、税制上非常に優遇されています。掛金をよほどたくさんかけていない限り、まったく課税されないということも珍しくありません。

退職所得は、一生のうちに何回も発生するものではありません。このような臨時的に発生する所得は、給料など定期的に発生する所得よりも税金を納める能力(担税力)が低い、と考えられています。さらにあまり多額の税金をかけてしまうと老後の生活費などに影響してしまうため、このような優遇措置がとられているのです。

個人事業主は退職金という制度がないため、通常この税制メリットを受けることができませんが、小規模共済を利用することで退職所得の税制メリットを受けることができる、ということです。

生前の廃業等による共済金受取の場合(年金形式)

また、共済金は状況により年金形式で受け取ることも可能です。この場合は公的年金等に準じ、公的年金等控除という控除がされた後の金額が雑所得となり、所得税・住民税が課税されます。

退職所得ほどではありませんが、老後保障のため公的年金も税制上のメリットが大きくなっており、公的年金と同様の税制メリットを受けることができます。

生前の任意解約による解約金受取の場合

「一時所得」という所得分類で、所得税・住民税がかかります。

こちらも退職所得ほどではありません税制メリットはあります。受取金額から一律で50万円を引き、さらに1/2をした金額に対して所得税・住民税がかかります。

ただし前述の通り、加入月数240か月未満の場合は元本割れしてしまうためメリットは薄れます。

死亡により受け取る場合

生前に解約金・共済金を受け取ることなく死亡した場合、配偶者などの親族が受け取ることができます。この場合、所得税や住民税は課税されず、相続税が課税されることになります。

死亡による受取の場合、死亡退職金に準じた相続税の課税対象となりますが、死亡退職金には「相続人の数×500万円」の非課税枠があります。生命保険金の非課税枠は有名なのですが、この死亡退職金の非課税枠はあまり使われることがありません。生命保険金とは別枠なので、それぞれの非課税枠をフルに使えば、現預金として保有しているよりもかなり相続税を節税することができます

ただし、受取人は法律で定められており、自由に決めることができないのが難点でしょう。原則として配偶者(内縁関係を含む)→契約者の収入によって生計を維持していた親族(子→父母→孫…)→それ以外の親族(子→父母→孫…)と優先順位が決まっています。

どうやって加入すればいいの?

加入窓口となっている商工会議所や金融機関で加入手続きが可能です。とりあえず銀行に電話してみましょう。

また、税理士も加入窓口となっている場合がありますので、お知り合いの税理士がいれば相談してみてください。

おわりに…

個人事業主は会社員と違い、年金や退職金といった老後保障が薄くなりがちです。

税制メリットをうまく受けながら、老後の備えを蓄えていきましょう。